2005年07月01日

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(生い立ちの記:13) 計算尺

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工学部・船舶工学科で学んでいるとき計算尺を持った。

中学生のころ、オモチャのような計算尺を使ったことはあるので知ってはいたが、あまり使わなかった。
竹の物差しに対数目盛が刻んであるような、いわゆるスライドルールである。

当時、電卓のようなものはなかったので、計算器といえばタイガーの歯車式であったが、特殊な職場を除いて課に1台あるかないかだったので普通の事務員はソロバンであった。

学部で演習や卒業研究でも、殆ど筆算であった。

H造船所造船設計部の建屋は鉄筋コンクリート4階立てであった。

我々の配属になる前に、戦時中に建てられ薄暗くて歩くとギシギシ言う木造の建物から移転が完了したところだった。

配属になった部署は、造船設計部・基本設計課・船殻計画係という10人足らずの職場であった。
係員一人に1枚の製図板があてがわれていた。

製図板を支える木箱に引き出しがついていた。

学部では烏口の製図もやったが、配属になったときは鉛筆で製図を行っていた。

船の図面は長い。
船体長さ200m以上の船体構造図を50分の1で描くので、製図紙の長さは数mになる。
物理的に長いだけでなく、製図に要する時間も長い。
そのため、新米の図面は、描き始めの早い時期から薄汚れており、描き上がった頃にはよれよれの薄黒い図面になってしまう。

船体の局部強度も、全体としての曲げやねじり強度もルールブックを引いて計算しながら板厚や部材寸法を決めるのである。
チェックを受けるときには計算書も提示する。
船級協会規則集に記載のない事項は材料力学などで計算し、寸法を決めなくてはならない。

ベテランは計算尺1本でスラスラと計算しメモしてゆく。
あんな物差しみたいな目盛りで、有効数字3桁でも4桁でも処理してゆく。
あるとき、何桁まで読めるのですかとおそるおそる聞いたら「5桁でも6桁でも読めるよ」と自信をもって宣うた。

長らく保存していた計算尺も、先月書斎の整理で烏口など製図道具箱と一緒に廃棄してしまった。

写真は、ワイシャツの胸ポケットに入る携帯用の丸形スライドルールである。
これは小さいので今回の廃棄処分を免れた。

長い計算尺といっても、せいぜい5〜60cmである。
この目盛りを4桁も5桁も読めるわけがない。

納得できないので、計算書は殆ど筆算で計算していた。
いつか、家に戻ったときに父にきたない計算書を見られ「これじゃあ大変だな」と言われたことがある。

図面も、コンストラクションプロファイル・ミドシップセクション・スーパーストラクチャ&デッキハウスなどは書いたが、シェルエクスパンション(外板展開図)は描かせて貰えなかった。

200人も居る設計部のなかで、配管や電線との調整で船装設や電装設と協議を行い、主機や補機との取り合いで機装設と調整も必要だった。

何時か、現場からヘルメットを被った作業長が図面を鷲掴みに「どういう手順で作ればこんな構造が出来るのか」と文句をつけに来たこともあった。


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