2006年08月08日

(飛行船:86) シュッテ教授の独創的設計

Schuette.jpg
(出典:"HINDENBURG an illustrated history")

硬式飛行船と言えば、ツェッペリンが同義語扱いされるほど有名である。

ツェッペリン伯爵はシュバルツの飛行船を見て、私財をなげうって硬式飛行船を実用化した。

その功績は偉大である。

伯爵の没後、その事業を引き継いで第一次大戦に敗れたあと残存した飛行船も格納庫も賠償に取られ、会社も工場も取りつぶされそうな状況のなかから立ち上がり米国に納入した「ロスアンゼルス」や「グラーフ・ツェッペリン」「ヒンデンブルク」を建造し運航したエッケナー博士は伯爵と並ぶ功労者である。
(エッケナー博士は工学博士ではなく経済学博士である)

伯爵から博士に引き継がれたツェッペリン飛行船製造社において一貫して飛行船設計者であったルードヴィッヒ・デューアはツェッペリンで実際に建造された119隻のうちアシスタントであった「LZ1」以外118隻の責任設計者であった。

しかし我々は硬式飛行船の基本設計に関するヨハン・シュッテ教授の功績を忘れてはならない。

マンハイムの企業家カール・ランツの出資でシュッテ・ランツ飛行船製造社を興してシュッテ・ランツ型飛行船を開発・建造した。

彼の設計した飛行船は幾多の画期的特徴を持っていた。

SL1.jpg
(出典:"DEUTSCHE LUFTSCHIFFE - Parseval-Schuette-Lanz-Zeppelin-")

第一の特徴は外形である。
唯一度飛翔したダヴィッド・シュヴァルツの飛行船が短い円筒と円錐を組み合わせた形であり、初期のツェッペリン飛行船が平行部の長い葉巻型であったのに対し、シュッテ・ランツの飛行船は美しい流線型であった。

後年建造された潜水艦に涙滴型艦型(ティア・ドロップ・ハル)というのがあるが第一号船「SL1」では長/径比が 7.1 とスマートであった。

SL1a.jpg
(出典:"HINDENBURG an illustrated history")

第二の特徴は十字型の尾翼である。

上の写真とプロファイルのスケッチは最初の試験飛行のときのものと思われる。
このときは下部尾翼が見当たらないが試験飛行のあとで増設されたのであろう。

この写真では上下左右に安定板と尾翼が明瞭に判る。

SL1@framework.jpg
(出典:"Zeppelins:German Airships 1900-40)

第三の特徴は大圏構造と呼ばれる構造方式である。

通常、船体や航空機の機体は肋骨主体の横型構造方式か、縦通材主体の縦型構造方式が採用される。
この大圏構造というのは強度部材をアサガオの蔓のようにダイアゴナルに配し形状と強度を保持させる方式である。

後年、英国ヴィッカース航空機のバーンズ・ワリス博士がイギリスの飛行船「R100」を建造する際この方式を採用し、後にヴィーッカス・ウェリントン爆撃機の設計に応用している。
縦型構造方式・横型方式に較べて軽量化出来るとされている。

恐らく特許の関係であろうが骨格は木製構造であった。

流線型船体や十字型尾翼などはその後ツェッペリンの飛行船にも採り入れられた。

シュッテ・ランツ飛行船は第一次大戦中、ドイツ陸軍に11隻(SLⅡ、SLⅤ、SLⅦ、SLⅩ、SLⅩⅠ、SLⅩⅢ、SLⅩⅤ、SLⅩⅥ、SLⅩⅦ、SLⅩⅧ、SLⅩⅩⅠ)、海軍に8隻(SL3、SL4、SL6、SL8、SL9、SL12、SL14、SL20)引き渡されている。

[註]バーンズ・ワリス博士

Wallis.jpg
(出典:"HINDENBURG an illustrated history")


ヴィッカース航空機の主任設計者。
飛行船「R100」、爆撃機「ウェリントン」などの設計の他、ルール工業地帯のダムを破壊するために開発されたスキップ爆弾(ランカスター爆撃機に搭載中、回転を与えてダム水面をスキップしてダム直下を爆破する)や地震爆弾などの開発で知られている。


Trackback on "(飛行船:86) シュッテ教授の独創的設計"

このエントリーのトラックバックURL: 

"(飛行船:86) シュッテ教授の独創的設計"へのトラックバックはまだありません。

Comment on "(飛行船:86) シュッテ教授の独創的設計"

"(飛行船:86) シュッテ教授の独創的設計"へのコメントはまだありません。

Post a Comment

コメントする
(HTMLタグは使用できません)
ブラウザに投稿者情報を登録しますか?(Cookieを使用します。次回書き込み時に便利です。)
  •  
  •