2005年07月28日

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(ブレーメンとオイローパ:9) 設計変更・建造

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「ブレーメン」と「オイローパ」は1926年12月14日に契約された。

このプロジェクトの主任設計者はシュヒティング博士であった。

とは言っても、主任設計者が全てを設計するわけではない。
とりまとめ責任者である。

船舶の設計は、どんな目的で、どの航路(あるいは海域で)で就航するか、積載するものは荷物か/人か、積載する量は如何ほどかを勘案してイメージを創る。

船の計画では Speed,Strength,Stability の3要素が基本で、3Sと言われている。

重要度に並べると、第一が強度で、復原性がこれに次ぎ、速度が3番目となる。

幾ら早くても航走中に折れたり割れたり曲がったりしては話にならない。
折れたり割れたりしなくても、航行中に転覆しては一大事である。

壊れず転覆しないことを当たり前と思っている人が多いが、商船でも艦艇でも幾つも実例がある。
「生い立ちの記」の19回に記載したように戦後にも大きな事故が起きている。

昔から海上輸送には危険が伴っていた。
そのため、リスクを回避するために損害保険が出来たが、危険率は老朽船と新船では異なるし、安全な船とそうでない船で差をつけるために、ロイドのような保険会社が独自の評価基準を設け、保険料率算定の基準にしていた。

それが、いわゆる船級協会で、ロイド・レジスター(LR)のほか、アメリカ(ABS)、日本(NK)、ドイツ(GL)、フランス(BV)など、現在では十数ヵ国に存在する。

船舶は関係各国の船舶に適用される法規や、安全・衛生に関する条例も満たさなければならないが、これら船級協会の規則も満たさなければならない。

3Sの最後の項目、スピードは安全性の面から見ると3番目であるが、これも重要な項目である。
どのくらい荷物を積めるか(載荷重量)とともに、建造契約書に明記される数値であり、達成出来ないと引き取り拒否にあう場合もあるからである。

船舶は航空機や自動車と違って一隻ごとに設計し、図面に展開し、それに基づいて板厚○○mm、板幅○.○m、長さ○○mの鋼種△△の鋼板を何枚と製鉄所に発注するのである。

その板厚は、法規も船級協会規則も満たし、全体強度・局部強度・振動などあらゆる見地から決められたものである。

従って、総トン数が根本から変更になると何千枚もの図面が書き直され、何万も何十万もの部材が変更を余儀なくされ船価も納期も大幅に改訂されるので、通常は考えられない。

ところが、「ブレーメン」と「オイローパ」は契約後、総トン数が3万5千トンから5万トンに変更されたのである。

ブレイナード氏の著書には、非常に急いで契約が結ばれたと述べられている。

ワールドフォトプレス(株)のワールドムック272(栄光のオーシャンライナー)の北ドイツロイドの項では、
「建造直前になって5万トンに拡大されたのである。その時「オーローパ」の方はすでに材料を手配済みであった。結果として、「オイローパ」は3万トン船用の1インチの薄い鋼材を使って5万トンの船体を造った。この失敗は最後までたたることになる。」とある。
(しかし、1インチ(25.4mm)は必ずしも薄い鋼板とは言えない。
小型艦艇の船側外板は数mmから10mm程度、水密隔壁の板厚は3.2〜4.5mmが使われている。)

ここに掲げた写真は「オイローパ」の建造されたブローム&フォスのハンブルク造船所で建造中の客船である。
前掲の Kurt Ulrich 著 Luxusliner に掲載されていたものであるが、恐らく「オイローパ」であろう。

当時は鋼板を一枚ずつ吊り上げ、ボルトで仮止めしておいてリベットで接合していた。

船側外板にも肘板に鋲孔が開けられているのが判る。

鋲を打つには3〜4人一組で作業をする。
一人がホドで鋲を焼いて投げると、受け取った者はそれを鋲孔に差し込む。
それを反対側にいる者がハンマーでかしめるのである。
4人の場合はこれに取り次ぎ・補助が加わる。

鋲をどれだけ使ったかで工事の進捗状況を把握していた。
長崎で建造された戦艦「武蔵」の総鋲数は 6,491,250本であったと記録されている。


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