2007年07月04日

*** 当ブログは2014年5月末に引っ越しました…新しい「紺碧の海」はこちらです ***

(飛行船:376) エッケナー博士とツェッペリン飛行船(32)

Bild145.jpg
(レークハーストで水平尾翼を補修しているグラーフ・ツェッペリン)

broadway.jpg
(ブロードウェイのパレード:Brigitte Kazenwadel-Drews著 "Zeppelin erobern die Welt" )

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 グラーフ・ツェッペリンの最初の飛行(11)

幸いなことに、風は全くと言って良いほど静かであった。

飛行船は比較的静かに静止していた。
多くの女子供を含む多くの群衆は激しく騒ぎ始めていた。

いつもは常識のあるアメリカ市民も、熱狂で完全に手に余る状態であった。

いろいろな出来事の後、非常に意義のある航路開拓をなし遂げた飛行船がバンパーをアメリカの大地に接した瞬間であったが、私は興奮した群衆を見下ろして微笑んでいた。

大きなものから小さなものまで、沢山の招待が押し寄せてきたが、その中に非常に熱心に、中西部へグラーフ・ツェッペリンで飛来して欲しいという招待があった。

度重なる要請にとうとう、船尾の補修が終わった後で、もし可能であれば中西部に飛行しようと約束した。

すると直ぐに、何十人もの人が乗客として飛行したいと希望して押しかけてくる始末で、新聞には西部の大都市はすべて、飛行船の飛来を熱望していると掲載された。

残念ながら彼らの望みは叶えられなかった。

尾翼の修理は12日以上を要することになり、もうすぐ11月になろうとしていた。

天候は大変予測しがたいので、レークハーストの格納庫からフィールドに引き出すときに飛行船に何が起きるか判らない。

それで突然、中西部への飛行キャンセルを決断し10月28日の夕刻、帰途に就くことに決めた。

出発のとき、天気は良いだろうか?
多くの人が見送りにやってくるに違いない。
彼らの前で事故は起こしたくない。

昼にニューヨークとロングアイランドのあいだをモーターボートで渡って、ロングアイランドの素晴らしい邸宅に友人を訪ねた。
途中で、冷たい北風が耳元で鳴った。
出発時にトラブルが予感される。
北風は夕方まで止みそうにない。

午後戻るとき、事態はもっと悪くなっていたので、遅れないようにレークハーストまで車で帰り、準備状況を確認した。

格納庫の中では乗組員と乗客の幾人かが飛行船のまわりに立っており、郵便物と手荷物は積み込まれ、みな飛行船を引き出す最終決定を待っていた。

状態はあまりよくなかった。
比較的強い毎秒8〜10m程度の風が格納庫を吹き抜け、長大な飛行船を引き出すことは出来なかった。

そのうち風がおさまるのを期待して、午後8時に予定されていた出発を深夜まで延期した。

それで乗客は辛抱したが、2〜3百人の頑固な人達以外の群衆は徐々に帰宅したことは結果的によかったと思っている。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

[註1]バンパー
グラーフ・ツェッペリンの指令ゴンドラの前下部に半球状の突起が出ているのがバンパー(緩衝器)である。


[註]尾翼を補修している写真
この写真は「CLUB」、「LICA」のパッケージに入っていたタバコカードの中の145番目のカードを複写したものである。
左舷側水平尾翼(水平安定板)の下面の外皮が完全に剥がされている。
このあと全面的に新しいものに張り替えられた。


Comment on "(飛行船:376) エッケナー博士とツェッペリン飛行船(32)"

"(飛行船:376) エッケナー博士とツェッペリン飛行船(32)"へのコメントはまだありません。