2007年07月11日

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(飛行船:384) エッケナー博士とツェッペリン飛行船(39)

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(グラーフ・ツェッペリンから見たリビエラ海岸)

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 エジプトへのセンチメンタル・ジャーニー(1)

すべての期待を越えて大きな成功をおさめたグラーフ・ツェッペリンの偉業は、多くのトラブルや困難を乗り切って充分な確信をもたらし、人々はツェッペリン社に惜しみない声援を送った。

しかし、その偉業の結果が何かを生み出すわけではなかった。

必要なものは、性能を改善したもっと良い飛行船をつくる資金を立ち上げることであり、また世界が飛来を望んでいるグラーフ・ツェッペリンの飛行を継続するための基金も必要であった。

賛辞はとても素晴らしかったが腹の足しにはならず、人々の熱狂的な関心はあがり我々の努力と真剣で厳しい仕事ぶりは賞賛されたが、それらは飛行船に充填される浮揚ガスに取って代わることは出来なかった。

1928年から29年に掛けての冬当時、まだ大新聞社や郵趣家の興味が乗客の乗船料を補填するほど理解の度合いが充分とは言えなかった。

何とかして運航資金を立ち上げる必要があった。
何処で見つければ良いのだろう?

話としては商用ツェッペリン輸送事業を目論む投資会社を考えることも出来る。
しかし、当時の投資家はその熱意と確信に欠けるように見えた。

国民の中にはツェッペリンに熱狂的で義援金を寄付する熱心な人達もいた。
しかし、再びドイツ国民にどうして頼めるだろうか?

残るのは政府であったが、当時の政府に助成金を出すことは難しかった。
この分野で最も重要な機関は大変に親身に見える態度ではあったが、彼らの考えでは他に重要な任務があるということで、なお 非常に曖昧な態度であった。

最終的に、多くの政府要人を招待して、幾分長い飛行で彼ら自身の経験から、理屈でしか知らなかったツェッペリンの安全で快適な航海を習得する機会を持って貰うという考えに思い当たった。

その飛行は、当然のことながら特別に興味を引くものでなければならず、次の3つの理由からエジプトに着陸する東地中海クルーズに行く計画を決めた。

第一に、その航海は乗客も興味を持つ、多くの航海上の課題を解決する機会であり、
第二に、眺めがよく、古代から今日まで歴史の舞台が多く存在する地域であり、
第三に、訪問する各都市の人々にとっても、世界から注目されているツェッペリン飛行船上からそれを眺めるドイツの政治家にとっても有効な広報飛行になると思ったからである。

おそらくツェッペリン・エアラインを実現させるべきか否かにかかわるであろう非常に影響力のある賓客を、上に述べたような素晴らしい旅に招待する準備に取りかかった。

1928、29年のドイツの冬は厳しく、1月初旬に気温零下18℃で浮揚したことがあった。

リビエラの早春と、東地中海の春のさかりに行けるように、出発を2月24日に決めた。
しかし、2月20日にフリードリッヒスハーフェンでは零下24℃を記録し、西ヨーロッパとロシアは雪に覆われたので、数週間延期して、もっとましな天候を待つのが良さそうであった。

それで、その旅をまるまる4週間繰り延べて、カレンダーによれば春の初めにあたる3月21日に変更した。

それでも中央/南ドイツはなお寒く、暖房のないキャビンの乗客はクレタ島に着くまで冬のコートを脱がなかった。

過去50年間で最も寒い冬に、リビエラの椰子並木は殆ど凍っていた。

従って、寒いフリードリッヒスハーフェンを深夜に出発して、夜中にフランスを縦断し、春先の最初の朝、マルセイユに降り注ぐ暖かい日光が見た乗客には素晴らしい経験であった。

そこから1時間半、リビエラ海岸に沿ってサンレモに行き、低い高度でこの魅力的な美しい海岸をゆっくり楽しんだ。

そのあと南に向かってそこから海上に出てまもなく、右手にナポレオンの生まれたコルシカ島の壮大な山岳が見え、左にはその彼が偉大な経験のあと、運命のいたずらにより囚人として過ごしたエルバ島が見えた。

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[註1]リビエラ海岸
コートダジュールに続くイタリアの保養地。サンレモ、インペリアからジェノバ近くまでの海岸線。
上掲の写真はグラーフ・ツェッペリンが同年4月のスペイン飛行の際撮影されたもので、初めてエジプトに行ったときはもっと低く飛んだのかも知れない。

[註2]クレタ島
エーゲ海に浮かぶ島で、現在はギリシャ領である。
北緯35度線上にある。


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