2008年12月28日

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飛行船四方山話(53): 飛行船の洋上航法

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洋上を航行するときは航海計器が必要であった・・。

[区分] 運航・航法
[級]  中級

[問題]
飛行船が長距離飛行するようになり、夜間航行や洋上に出るようになると航法が必要になりました。
特に飛行機と較べると風圧側面積が大きく、速度の遅い飛行船は偏流を検出して自船位置を確認する必要がありました。
偏流測定にはいろいろな手法が試みられましたが万一、自船位置を失ったときはどういう手段が考えられていたでしょうか?

 1. 無線方向探知機
 2. ラジオ・ビーコン
 3. 六分儀による天測
 4. 無線で航行中の洋上船舶に照会

[答] 4

[解説]
飛行船が開発された当初は地文航法でしたが、洋上に出ると目標物がありません。
ツェッペリン伯爵は1912年に完成したLZ12で初めて北海で洋上試験飛行を行っています。
羅針盤にはマグネット・コンパスとジャイロ・コンパスを併用していました。
高緯度では磁気コンパスは使えないからです。
当時、無線方向探知機はなく、もちろんラジオ・ビーコンもありません。
天測をしようにも、操縦ゴンドラの上に大きな主船体が邪魔であり、曇天には使えません。
それでコンパスで推測航法を行い、洋上を航行する船舶を見つけたら無線で位置を確認することにしていました。
ところが、何度か経験しているうちに船舶の位置には大きな誤差があることが判り、飛行船から正しい位置を知らせてやる始末でした。
エッケナー博士の著書に、レークハーストから33時間航行したあと、予測した時間と方向にファヤル島の南西端を見たという記述があります。
偏流を測定するために、乗組員が船上で飲んだソーダ水の空きビンを投下したり、落下しながら煙を吐く煙爆弾のようなものを用いていたようです。


Comment on "飛行船四方山話(53): 飛行船の洋上航法"

飛行船の洋上航法を楽しく読ませていただきましたが、一点気になることがありましたので書かせていただきました。それは飛行船の計器でマグネットコンパスは解りますが、果たして当時(1900年代初期)に飛行船に搭載可能なジャイロコンパスがあったのかどうか?ということです。私は以前あるところで1920〜30年代のジャイロコンパスを見たことがありますが、これはとても大きく重たくとても飛行船に搭載可能だったとは思えません。船や潜水艦などであれば可能ですが。当時のモーターでは効率があまり良くなく、どうしても指北力を得るためにはローター(独楽)を大きく重たくしなければならなかった様です。このような理由でスぺりー式(アメリカ式)、アンシューツ式(ドイツ式)を問わず飛行船にジャイロコンパスを搭載することはほとんど不可能だったのではないでしょうか?