2009年10月25日

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再び「SHIP検定:客船読本」を取り上げる

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昨夜、眠れぬままにシップ検定委員会編「客船:公式読本」をめくっていると妙な記述が幾つか見つかった。

ひとつは第1章の5番目の項目(ページ15)である。

「階級社会ではない現代のクルーズ客船」の項で、『「ブレーメン」や「レックス」など五万総トン級の客船は四〇〇〇人以上を収容したが、最も多かったのは庶民層の三等船客だった。しかし、アメリカが移民制限を行うようになり、以前のように大量に移住ができなくなったため、劣悪な三等船室は姿を消していった。』という記述である。

総トン数51656総トンの客船「ブレーメン」の乗客定員は合計2228名で、その内訳は1等:811名、2等:500名、ツーリストクラス:300名、3等:617名で、1等船客が最も多い(姉妹船「オイローパ」では2265名の乗客定員のうち、1等が860人である)。

3等のキャビンは2〜4人部屋の個室で、共用のバス・トイレは勿論のこと、3等船客用のプロムナードデッキや喫煙室も用意されていた。

決して劣悪な3等船室ではなかった。

執筆者はアメリカがヨーロッパからの移民制限を行ったのがいつ頃で、どういう制限であったのか知らないわけではなかろう。

「ブレーメン」、「オイローパ」の保持していたブルーリボンを獲得したイタリア・ラインの「レックス」(総トン数51062トン)の乗客定員も2358名であり、何を根拠に四〇〇〇人という数と記載したのか是非知りたいものである。
たしかに同船の場合、1等船客:604名、2等:378名、ツーリストクラス:410名、3等の966名と3等船客定員が1等を越えているが、それで「レックス」を移民船と呼んで良いのであろうか?

検定委員会、あるいは公式読本の編集責任者の見解を聞きたいものである。

全部を点検したわけではないが、気のついた点をあとひとつ取り上げておく。
第13章の「92:客船の厚化粧が剥がされるドック入り」の項である。

『厚化粧が剥がされる』という表現も低俗週刊誌みたいで気になるが、問題はその本文記述である。
『(前略)とりわけ、二年に一度はドライドックと言って、船底部分まで完全に露出した状態にして念入りにメンテナンスを行う。まず潜水士の誘導で台座の上に船を載せ、その後、船底部分が完全に露出するまで完全に水を抜き取り、主機関をはじめとする機器類の調整や修理など、広範なメンテナンス作業が実施される。(後略)』

ドッキングでキールを着底させる『台座』は盤木と呼ばれる。
それはともかくとして、ドック入りさせるときに潜水士など絶対に使わない。
沢山の繋留索が張られている状態で潜水作業を行うと送気管や命綱が絡まって危険きわまりない。

ドック入りするときは着底まえに両舷の繋留索で微調整したのち、乾ドックであれば排水モーターで時間を掛けて排水して入渠船を着底させ、浮きドックであればドックのバラストを排水して浮揚して入渠船を持ち上げる。

何だか、この読本を読んでいると検定そのものに少し疑問を感じるようになった。

見出しの絵画は、5万総トン級客船「ブレーメン」(北ドイツロイド)と「レックス」(イタリア・ライン)を描いたものである。


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