2006年12月29日

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(飛行船:200) ツェッペリンアルバム(写真:第80回) 写真102 −LZ127 乗務員居室−

Bild102.jpg
[102枚目:乗務員居室]

主船体下部を全通している下部通路には乗務員の居室と寝室が設けられていた。

居室や寝室とガス嚢との間には帆布製の仕切りがあった。

「グラーフ・ツェッペリン」では長距離飛行の場合約40名の乗り組みが必要であった。
操舵室の当直と5基のエンジンを操作する操機手は航用船舶と同様、3直体制である。

船舶では午前午後とも0時から4時、4時から8時、8時から12時にブリッジではそれぞれ1等航海士、2等航海士、3等航海士が当直に立つ。

それぞれの航海士とペアになってる操舵手(クォーターマスター)と船橋に立ち、機関制御室には1等・2等・3等機関士が直に当たる。

船長・機関長に当直はないがそれぞれ航海部・機関部の責任を担っている。

しかし、飛行船では方向舵だけでなく、さらに微妙な調整を要する昇降舵もあるので操舵室では航海士のほかに船長資格を持つものが当直に立っていた。
それがワッチオフィサーである。

以下に、長距離飛行の場合の乗務員を列記する。

Ⅰ 司令(1名)
   その飛行船運航の最高責任者である。
   当直はないが、離陸・着陸・荒天などではワッチオフィサーに
   代わって全船の指揮をとる。
   エッケナー博士が乗船するときは司令の資格であった。

Ⅱ ワッチオフィサー(3名)
   いわば当直船長という配置である。
   従ってレーマン、シラー、プルス、ザムト、ヴィッテマンなど
   船長資格をもつ人が3直交代で操縦室に立っていた。

Ⅲ 航海士(3名)
   いわゆるナビゲーターである。
   方向舵手、昇降舵手に指示して操船すると同時にエンジン
   テレグラフにより5基のエンジンゴンドラにいる操機手にも
   指示を出し状況報告をうけて飛行船の状態を把握する。
   航海士も4時間当直について8時間休憩していた。

Ⅳ 機関士(1〜2名)
   機関部の責任者である。
   5基のマイバッハエンジンの順調な運転を維持するのは容易ではない。
   当直のない代わりに何かトラブルが発生すれば危険を冒してでも
   対策を講じなければならない。文献によってはアシスタントを
   伴っていたとの記述も見える。

Ⅴ 電気技師(1名)
   強電・弱電を含む電気機器の維持・補修に当たる。
   「グラーフ・ツェッペリン」では無線室と厨房の電力は風力発電機で
   運転されていた。無線通信による気象情報を頼りに飛行していたので
   短波・長波の送受信機の保守は重要な任務であった。

Ⅵ 通信士(3名)
   無線通信も重要であり、通信士も3直であった。
   日常の気象情報の受信だけでなく洋上航行中に緊急通信が必要な
   状況もある。現に「グラーフ・ツェッペリン」がはじめて大西洋を
   横断してアメリカに赴く際、安定板左翼の外被に亀裂が生じ、米海軍に
   救助を要請したのである。

Ⅶ 方向舵手(3名)
   操舵室の正面で舵輪を握っているのが方向舵手である。
   方向舵手も昇降舵手も当直は航海中、航海士とトリオを
   組んで当直についていた。

Ⅷ 昇降舵手(3名)
   昇降舵手には経験と勘が必要であった。
   暖かい空気の層から霧の中へ降下するときは冷たい空気が船首を
   押し上げて上向きになる。霧の下に暖かい空気層があればその逆現象が
   おきる。従って昇降舵手はそれを先読みして操船しなければならなかった。

Ⅸ 操機手(15名)
   飛行中は5基のエンジンゴンドラに1人ずつ当直についていた。
   この配置も3直であったから合計すると15名になる。
   飛行中に主船体から吹きさらしのステップでエンジンゴンドラに乗り移り
   当直時間中機側にいるのも孤独な配置であった。

Ⅹ ダイニング関係(4名)
   資料によってはレストランマネージャー、コック、スチュワード、ボーイ
   とするものもあり、コックを2名としたり、スチュワードを2名にした
   ものもあるがレストラン部は4名前後乗船していたようである。

ⅩⅠ その他(数名)
   バルンマイスター(1):飛行船は自由気球に推進装置をつけたものである。
     米国ではいまでも飛行船の免状を取るには自由気球の免状が必要である。
     ツェッペリン飛行船でも要員の一人であったのであろう。
   ガス嚢主任(1):浮揚ガス嚢、燃料ガス嚢の維持・管理は重要であった。
     ガス嚢の点検・補修の専任者である。
   ファールマイスター(2):船舶でいう甲板長のようなものであろうか?
     Fahrとは運転・飛行の意味である。資料によるとこの代わりに
     キールエンジニア(1)となっているものもある。
   セールメーカー(3):飛行船はガス嚢と同様外被の亀裂も重大事故である。
     飛行中に飛行船の上で縫い合わせを行うこともあったという。

特に、その他(数名)とした乗組員については資料によって区々でありよく判らないことも多い。

ともかくも20人の乗客が飛行船で旅行するために、その倍以上の乗組員が必要であった事情は判ったような気がする。


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