2007年05月18日

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(飛行船:328) 丁亥飛行船紀行(14) ボーデン湖を翔ぶ(1:離陸)

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5月1日火曜日、朝7時にホテルで朝食を摂って7時半にタクシーでDZRに向かった。
10分ほどで着いた。

運転手は帰りも迎えに来るという。
何時になるか判らぬと言うと、電話番号の印刷されたカードを渡し、これで自分の名前を言ってくれればすぐに迎えに来るという。

当地のタクシー事情が判るような気がした。

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まだ早いせいか誰もいない。

8時前になると、制服を着たDZRの職員やテント内でカフェを営業している人などが準備を始めたようである。

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ほどなく受付が始まったので、我々は予約確認書を手にカウンタで搭乗手続きを行い、搭乗券を受け取った。

氏名、飛行日、飛行予定時刻、発着地、フライトナンバー、乗客IDなどが印刷されている。

そのうち、このフライトに乗船する人達が集まりはじめた。

独りの人も、夫婦連れも、両手に杖をついた老婦人を伴った人もいる。

天幕張りのこの待合室には幾組かテーブルと椅子があり、奥にはカフェも営業を始めていた。

待合室にはツェッペリンNT建造中の写真や、各地を飛行したときの写真がパネル展示されている。

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その中にマイナウ島の観光ポスターもある。
今年はマイナウ観光年らしい。

受付横のショウケースには、絵葉書やピンバッジなど記念品の類が陳列されていた。

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8時半ころであろうか、我々2人はゲートの中の説明会場のような部屋に通された。

地上スタッフの Dina Fassbinder 嬢が、飛行船に搭乗する手順や、非常口の位置・ロック解除、ライフジャケットの収納場所や着用法など航空機一般に関する安全注意のほかに、風によりふれ回るので写真を撮ったりせずに素早く乗り込むことなど飛行船特有の注意事項を英語で説明してくれた。

会場には、一点繋留された飛行船の振れ廻りを図解するパネルも用意されている。

説明を受けた後 待合室に戻っていたが、やがて搭乗予定者のゲートインが始まった。

1人ずつチケットをチェックし、ポケットから鍵束やライターなどを提出させ、両手をホールドアップさせて手持ちの金属探知機で、前向き・後ろ向きと入念にチェックされる。
全員のゲートインが終わると先ほどの説明会場に着席させて、我々に行った同じ説明が行われた。
外国人である我々にドイツ語の説明では判りにくいだろうと事前に説明してくれたのである。

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説明が終わると、外に出てマイクロバスで飛行船の船側まで運ばれた。
格納庫の前を迂回して、繋留されエンジンを起動している飛行船の傍に我々を降ろすとマイクロバスは待避して行った。

同乗してきたディナさんの指示で、予め説明された通りに待機線の前に2列縦隊で並ぶ。

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搭乗口の誘導員の合図で、2人ずつ素早く搭乗する。
横風で突然飛行船が移動するかもしれないからである。

入り口はゴンドラ後方左舷側である。
ステップの最下段は地上から30cm程度に浮いている。

我々は最後に乗り込んだ。

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ゴンドラの前端は操縦席で左舷側が船長席、右舷側が副操縦士席である。
そのうしろに中央通路を挟んで両側に5人ずつ前向座席が並んでおり、操縦席と背中合わせにもう2人、後ろ向きに着席するようになっている。

私は船長と背中合わせに着席した。
向かいはJである。

コパイ席の背後のみ空席で、このフライトの乗客は11名であった。

窓が大きく眺めはよい。

このフライトでたった一つ空席となった右側には比較的大きなヒンジ窓があるので撮影などに便利である。
操縦席両側にも小型ヒンジ窓がある。

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全員が着席すると飛行船は離陸していた。
離陸時に身体には何も感じなかった。

ディジタルカメラの内蔵時計によれば現地時間午前9時0分であった。

ヘリコプターのように地上に対する吹き下ろしもなく、機内で普通に会話が出来るほどエンジン騒音も小さい。

飛行中に窓を開けても、対空速度に応じた風が顔に当たるだけでキャビンに殆ど影響はない。

思っていた以上に快適な乗り心地である。

96年前、同じフリードリッヒスハーフェンで、エッケナー博士の指揮する「LZ-10:シュヴァーベン」に乗ってボーデン湖を遊覧飛行したヘルマン・ヘッセが「素晴らしい空中散歩」というエッセイに描写している浮き浮きした気持ちが判るようである。

「シュヴァーベン」のゴンドラには窓ガラスがなく、客席は籐椅子であった。
ヘッセは「もしまた、空をとぶチャンスがあるなら、大喜びでそうするであろう」とこの飛行を礼賛しているが、サービスされる極上のシャンパンについて「このおまけだけは、飛行船のなかで唯一ナンセンスで必要のないもののように思えた。」と述懐している。


Comment on "(飛行船:328) 丁亥飛行船紀行(14) ボーデン湖を翔ぶ(1:離陸)"

こんにちは、リンクとトラックバックしたページは2004年6月に飛行したときのものです。
なぜ乗ったのかというと、その前年だったかフリードリヒスハーフェンからフランクフルト
に向かう飛行機の中から飛行船を見つけ、それで調べたら観光飛行があるというのを知った
のでした。

本当に好奇心だけで乗ったのですが、なかなか優雅な時間を過ごすことができました。こん
なに詳しいページがあるとは! 興味深く読ませていただきました。ありがとうございます。