2007年07月21日

*** 当ブログは2014年5月末に引っ越しました…新しい「紺碧の海」はこちらです ***

(飛行船:394) エッケナー博士とツェッペリン飛行船(49)

Bild84.jpg
(グラーフ・ツェッペリンの断面模型)

GasBombe.jpg
(霞ヶ浦に輸送された水素ガスボンベ)

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 世界周航(2)

この飛行に要する経費は最低でも25万ドルと見込まれていた。
その大部分は東京でのガス補充と燃料の準備に掛かる費用であった。

エンジンを駆動するために特別な燃料ガスが必要で、少なくとも25万立方mを日本に海上輸送し、そこで保管するために、機関士を派遣しなければならなかった。

それにはどのくらい掛かるのだろう?

ドイツ政府には殆ど期待できなかった。
当時、ツェッペリン飛行船に非常に消極的であった。

主に自分たちで賄わなければならないが、それは非常に難しそうに思われた。

世界中の切手蒐集家達が、どのくらいツェッペリンの消印に興味を持っているのか把握できなかった。

どうやって推定すれば良いのだろう?

この件で困惑しているときに、気前の良いアメリカの大手新聞社主、ウィリアム・ランドルフ・ハースト氏の驚くべき提案が飛び込んできた。

飛行船上から、世界中に独占報道を認めることの見返りに15万ドル支払うと申し出があったのである。

その額は推定所要経費の3分の2に相当する。

私は喜んで申し出を受けた。

しかし残念ながら、これは受け入れられないことに気がついた。

もし、ドイツの新聞社を報道関係名簿から外したりすると、彼らは私を非難し、批判側にまわるであろう。

おそらく、正義とは無関係にツェッペリンは長年にわたるドイツの誇りであり、ドイツの新聞社はこれまで出来る限り助けてくれた。
少なくとも信じてくれた。

それで、ハースト氏の申し出に対して、イギリスを除くヨーロッパは独占権から除外すべきであり、その報道権は彼らが望むのであればドイツの出版社に残すべきであると答えた。

それに対してハースト側は金額を10万ドルに減額した。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

[註1]ガスと燃料
グラーフ・ツェッペリンの主船体は前後に17の区画に分割されている。
そのうち中央部12区画はさらに上下に分割され、上部6割程度の容量は、前後端の区画とともに浮揚ガスである水素が充填されている。
中央部12区画の下部はブラウガスという燃料ガスが充填されていた。
長距離飛行で消費量が多い場合、液体燃料のガソリンでは、消費するに従って飛行船全体の浮力バランスを取るために浮揚ガスの水素を放出する必要がある。
これをガス燃料にすれば気体の比重が空気に近いので浮力の調整が少なくて済む。
このため、燃料は主にブラウガスを用いたが、ガソリンもバラストを兼ねて搭載していた。
ブラウガスはヘルマン・ブラウ博士が発明した石油気化ガスであるが、世界周航のときはアメリカのカーボン・アンド・カーバイド社からピロファックスという液体プロパンガスをボンベで750本購入し、充填時に水素と混合して用いている。

[註2]先遣機関士
上記、大量の浮揚ガス、燃料ガスの検収と保管のため先任機関士のカール・ボイエルレを日本に派遣しており、グラーフ・ツェッペリンが飛来したときに、機関長として乗船してきたウィルヘルム・ジーゲルと交替して機関長として乗船しアメリカ軽油帰国している。

[註3]写真補足
上の写真はガス嚢の状況がよく判る断面模型の写真を例のツェッペリンアルバムから転載した。
下の写真は霞ヶ浦に送られた水素ガスボンベである(Knaeusel著:Mythos Zeppelin から転載)。


Comment on "(飛行船:394) エッケナー博士とツェッペリン飛行船(49)"

"(飛行船:394) エッケナー博士とツェッペリン飛行船(49)"へのコメントはまだありません。