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(南独飛行船紀行:9) フリードリッヒスハーフェン(2)

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 フリードリッヒスハーフェンの見どころをウェブで調べてみると、ロールシャッハ産砂岩で出来たバロック様式のシュロスキルヒェ、高さ22mの突堤の展望台、それに奇跡的に爆撃を免れフリードリッヒ通りに立っているツェッペリン噴水が載っているが、何と言っても1930年代に建てられたツェッペリン博物館が一番の見どころである。

 市駅の前に立つゼーホテルにチェックインすると赤と白のマロニエが咲き誇っている湖岸の公園を抜けてツェッペリン博物館に向かった。ツェッペリン噴水の脇を通って数百m行くと、港の船着き場に沿ってオープンカフェテラスや土産物屋の軒先を行くと白亜の博物館が建っていた。

 フリードリッヒスハーフェンには鉄道の駅が2つある。宿舎の傍の市駅とツェッペリン博物館前の港駅である。フリードリッヒスハーフェンからは対岸のロマンスホルン(スイス)へ1時間ごとに連絡船が出ており、東はリンダウ経由オーストリアのブレゲンツ、西はメーアスブルク、ユーバーリンゲン、コンスタンツなどと結ばれているのでフリードリッヒスハーフェン市駅から引き込み線が敷かれており、ツェッペリン博物館は、その港駅正面に建っていた。

 3階建ての堂々とした白亜の建物で、一部6層の塔屋がある。この建物の1階、2階部分がツェッペリン関係硬式飛行船の博物館になっている。最上層の3階は中世から現代に至までのボーデン湖一帯の芸術作品を展示した美術館になっている。

 一階のエントランスの北は駅に、南は港に開かれており、西側に広いロッカールームや売店があり、東の入り口の上には霞ヶ浦やリオデジャネイロなど「グラーフ・ツェッペリン」が寄港した地名が三十数ヶ所アルファベット順に掲げられており、その下がゲートになっていた。

 早速入場する。入ったところは広い空間で中央に置かれたリムジンが小さく見える。前に回ってみると、マイバッハのツェッペリンであった。ウィルヘルム・マイバッハはダイムラー社の主任技師としてメルセデス第1号機を設計したのち、1909年にダイムラー社を辞め、息子カールと共にツェッペリン伯爵のためにマイバッハ・モーター社を設立し飛行船のエンジンを供給した男である。ここに設置されているセダンはグローサー・メルセデスに匹敵する超高級車マイバッハ・ツェッペリンである。マイバッハが居なければ後のダイムラー・ベンツはなかったと言われるほどの人物であった。

 この広間の壁には「ヒンデンブルク」の索を引いて着陸を支援する人達の大きな写真が貼られていた。1899年に伯爵がマンツェルに建設した水上格納庫の模型や、その当時使われた木製梯子の実機大模型も置かれている。そのほかケースに入ったその水上格納庫や、フランクフルトに建設された格納庫の縮尺模型、それに飛行船船首先端部材や浮揚ガス安全弁などが展示されていた。ここには「LZ-129:ヒンデンブルク」の実寸大部分模型への昇降階段が用意されていた。この広い空間は「ヒンデンブルク」の主船体の下だったのである。

 昇降階段を昇ると「ヒンデンブルク」のBデッキである。173リングから188リングまでの右舷側が実物と同じジュラルミン枠にキャンバスを張った構造で作られている。実物のBデッキにはキッチン、士官食堂、部員食堂、シャワー室、トイレット、バー、喫煙室などがあった。この模型ではその右側が再現されていた。

 そこからさらに階段を昇るとAデッキである。中心線側にツインキャビンが2列に作られ、その外側は広いラウンジ、さらにその外はプロムナードになり、広い展望窓から外が展望できる。壁紙もテーブルや椅子も実物に似せて作られていた。乗客用キャビンも覗いてみた。

 その隣の展示室を見ると、「LZ127:グラーフ・ツェッペリン」のエンジンゴンドラの本体、「グラーフ・ツェッペリン」や「ヒンデンブルク」の接合されたガーダーやジョイントなど各種部品が展示してあった。要所々々には学芸員のような掛員が待機しており、自分から積極的に説明するわけではないが、質問すると待っていましたと言わんばかりに展示品や関連事項を詳しく説明してくれる。どこの展示場でもその説明に自信と誇りを持って展示場に待機していることがよく判った。

 2階の展示場には駅の方に突き出した展示部が2箇所あり、それぞれ軍用飛行船と旅客用飛行船の実物や模型、それに写真などの展示があり、この一画だけ撮影禁止の標識が表示されていた。
 また、このフロアには初期の飛行船から「ヒンデンブルク」の惨事まで動画や静止画で画像表示しているコーナーがあり、いつも殆ど満席の状態であった。

 この博物館の3階はこの地方の芸術協会の美術品の展示会場になっているそうであるが飛行船のことで頭が一杯になり、とてもそこまで回れなかった。

 階下に降りると、マンバッハモーターの後身であるMTUのディーゼルエンジンやツェッペリン社製建設機械などが展示されていたが、壁にはツェッペリン伯爵、アルフレッド・コルスマン、フーゴー・エッケナー、ルードヴィッヒ・デューア、カール・マイバッハ、クラウディウス・ドルニエなどツェッペリン企業グループに貢献した人々の彫像が掲げられ、それぞれに解説が記されていた。

 ゆっくり見ると幾ら時間があっても足りそうにない。閉館時間になったのでロッカーに預けていたものを取り出して退館した。


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2007年09月03日 11:34に投稿されたエントリーのページです。

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