2005年08月14日

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(生い立ちの記:21) 波浪外力解明のための実船試験(3)

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毎日、定時の波浪観測は目視観測の記録ととステレオ写真撮影を行ったが、洋上の波は実に複雑で記録は主観的となる。

風速・風向は風速計の指標を読めば良いのであるが、問題は波浪である。
大洋の波はうねりと風浪が重畳しているのが普通である。

定常的に波長100m、波高5m程度のうねりであれば、それを波長80mと見ようと150mと読もうと大差ない。

しかし、そういう定常的なうねりのない場合、当直の航海士によって波高0.5m、波長8mと言う人も居るし、波高0.2m、波長5mと言う人もいる。

専門職の当直航海士に伺いを立ててその値を記録していたが、よく我々計測班の予測と違っていたので当直交代の直前・直後に波を読んで貰った。
当直航海士によって波高も波長も、倍半分どころではない全然違うのである。
(すべての記録は当事者の発表したものが正である。
マスコミで報道される数値は当局の発表したものが正となる。
TVドラマなどで新米記者が火災の取材で、焼失面積や被害額を推定して記事に載せ食い違いを指摘されるシーンを見かけることもある。)
この実船計測では、決まった航海士の読みを記録した。

この実船試験のために航空測量用のカメラメーカーにステレオカメラなるものを開発して貰ったが、これは実船計測終了後、抜き取り試験的に何駒か選定して、職人技で数万平米の等高線を描くためのものであり、それから波に向きや波長波高を読むのは至難の業である。

このプロジェクトで何駒の等高線をトレースしたか知らないが、恐らく報告書に添付するサンプル以外に使い道はなさそうであった。

南シナ海に入ると鋼鉄製の甲板は焼けて熱くなり、デッキシューズなどでは歩けない。

デッキに生卵を落とすと見事な卵焼き(サニーサイドアップ)が出来る。

沖縄本島の島影をかすめて5日後にシンガポールの沖を通過した。

ビルも海岸通りを走っている車も見えたが本船はスルスルとマラッカ海峡に向かって走って行った。


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