2005年06月30日

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(生い立ちの記:12) 造船会社入社

ShipYard.jpg

3年次・4年次の夏休み工場実習も、会社としては役に立たない上に、手のかかる実習生を、昼間は課題を用意したりそれを評価したり、時間後は懇親会と称して飲み会を開いてくれたりした。
ささやかながら日当も貰っていた。

入社試験は面接である。日当・交通費・宿泊費は会社負担であった。

副所長・設計部長・工作部長・勤労部長などが並んだ面接室に一人ずつ入っての面接である。
既得単位表やその成績、それに卒業研究の課題などを見ながら、希望する事業所や職場(設計か、現場か、研究か)や、卒業研究の内容などについて訊かれたように憶えている。

入社が内定すると社内報などが送られて来ていたが、今のように課題とかレポートは一切なかった。

入社式は東京本社であった。

出席しているのは、会長・社長・専務・常務連である。
新入社員は技術系・事務系併せて200人程度であった。

代々木のあたりの宿舎で、それから1〜2週間、丸の内に通って役員の講話を聞いた。
タイムスケジュールはゆったりと組んであった。

毎日のように、代々木・原宿・信濃町・四谷界隈を散歩していたような気がする。

東京の集合教育(?)が終わる頃、配属になる事業所の発表があった。

私はTと二人、希望通りH造船所であったが、FはN造船所、EとKはS造船所であった。

それから6月末まで事業所に分かれて工場実習が始まった。

前年まではH造船所配属の者はN造船所に、N造船所に配属されるものはH造船所で1ヶ月程度の工場実習があったそうであるが、我々の年は1泊程度の見学旅行になっていた。
(S造船所は小規模なのでN造船所の分工場のような扱いであった)

H造船所に配属されたので、家族が市内に居るのに3ヶ月独身寮に入った。

今まで、社長や常務が相手をしてくれていたので勘違いする者もいた。
トイレットペーパーなど、寮の環境改善の要望を担当の教育課に提起し、対応に来た勤労課長に「部長に直接お願いしたい」と言ったのである。

世間知らずというか、怖いもの知らずに教育課も困っていただろうと思う。

写真は H造船所の船殻・艤装工場の一部である。

手前が艤装岸壁で、作業船や海洋構造物が見えるところに当時は数万トンの船が2重に係船していた。
その先の白っぽい建屋は管艤装の工場で、その左手の大きな建屋は船殻工場である。

上に見える運河に水切りクレーンがあり、ここで陸揚げされた鋼板は塗装され、マーキングされ、組み立て工場に入る。
ここで小さなアセンブリから段々と加工されながら船殻工場でブロックに組み上げられ、走行クレーンで船台に運ばれ船の姿になる。

写真の左上に造船設計部の入っていた建屋の一部が見える。
路線バスは橋を渡って造船所の正門前で折り返すので正門前が停留所であった。
(正門は写真の左上外側になる)

船台は第1から第4まであったが、建造船が大型化したため、第1と第3船台を使い、あとはブロック置き場になっていた。
敷地は広く、構内に野球場があったが、その先は背丈より高い葦が生えていて野鳥が巣を作っていた。

昼休みには構内で貝掘りをするものも居たようである。

造機工場は川向こうにあり、シリンダ径900mm8〜9気筒のディーゼル機関試運転の音が聞こえていた。


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